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2005/12/14

第54条 ポチを捜す日々(1) 

 翌朝午前5時、私達夫婦は、夜明けと同時にポチの捜索を始めた。両親及び弟家族には、これ以上の負担を掛けたくなかったので、私達だけで出発した。その日も一段と暑くなることが予想された。

 ポチを捜す途中、幾人かの人に声を掛ける。近くの畑で、既に仕事に取り掛かっていた老婦人に声を掛け、事情を話し尋ねるが、見かけなかったという返事。更に、白い大型犬を連れ散歩中の年配の夫人に尋ねる。やはり手掛かりなし。「それは心配ですね、早く見つかるといいですね・・」と、ねぎらいの言葉。丁寧に礼を述べ、捜索を続けた。暑くなる前に何とか捜したいと思うばかりであった。2時間捜し回ったが、ポチの行方は全く手掛かりなしであった。一旦実家に帰り、既に起床していた実家の家族に、捜索の結果を告げる。皆沈痛な面持であった。
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 私達が、毎年盆と正月に帰省するのは、もちろん物見遊山ではなく、長男夫婦としての務めがあった。どんなにポチのことが気がかりであっても、その務めはやらねばならなかった。心は嵐の中、必死で家の周りの清掃、墓参り等をする。墓前でも、ポチが早く見つかることを祈ったのであった。
 家内も当然、長男の嫁の務めがある。三度の食事の支度、家事の手伝い等々、私より更に多くの仕事がある。
そんなもの全てを放り出して捜し回りたいが、じっと耐えてそれらをきちんとこなした上で、ポチを捜索したのであった。

 9時になると同時に、管轄の保険所、動物保護センター、警察署に捜索の連絡を取る。毛の色、性別、老犬であること、私の住所は神奈川県であるが京都府の実家に帰省中に行方不明になったこと等々、細かく説明しお願いする。どの部署も応対は親切であった。

 その後も折を見ては、ポチを捜しに出掛けた。甥の自転車を借り捜し回る。夏の日が照りつけ汗が流れ落ちる。しかし、この暑い中でポチも苦しんでいるのではと思うと、自分の暑さなんかなんでもないと思った。自分が苦しめば、その分ポチは楽になるような気になって、懸命にペダルを漕いだ。
 捜し回っている間は、捜すこと自体に気を取られ、少し気が紛れたが、手掛かり無く実家に帰ると、途端に例えようもない不安感が襲ってくる。その不安感に耐え切れず、また自転車を駆って捜しに行く、このことの繰り返しであった。
                                つづく 

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コメント

ばあやんさんコメントありがとうございます。
その時の心境は、ポチの苦しみを代われるものなら代わってやりたいとの思いで一杯でした。当てもなく、やみくもに、甥の自転車に乗って、夏の日差しの中に何度も飛び出していったのを思い出します。何かしていないと全く落ち着かない心境でした。

投稿: 益樹 | 2005/12/15 22:04

ゆきさん、コメントありがとうございます。
私も家内も、仰って頂くほどには決して強くありません。時の流れが、少しづつ心を溶かしてくれました。どうにか心の整理が付くまで、半年掛かりました。
ポチが生きていたこと、私達の家族であったことを記録にしてやりたいとの一心で、始めたブログです。

投稿: 益樹 | 2005/12/15 21:58

お盆の行事をつつがなくこなされながらも、ポチちゃんのことが、いっそう気がかりだったでしょうね。
自分を傷めつけることで、ポチちゃんが楽になってくれているならと思われたお気持ちも、同じような状況になれば私も同じことを考えるように思いました。
何かしていないと返って心配がつのっておられたでしょうね。

投稿: ばあやん | 2005/12/15 07:51

益樹さんこんばんは。
周囲の方々を気遣いながら必死で捜索を続けられた様子、ひしひしと伝わってまいります。
益樹さんも奥様も、どんなにお辛かった事でしょう。
そのようなご経験をきちんと文章にして残していこうとなさっている、益樹さんのお心の強さに今更ながら感服いたしました。
猛暑と大変なご心労の中の捜索で、お二人がお体を壊さなかったかどうか、とても心配になりました。

投稿: ゆき | 2005/12/15 00:10

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