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2005/08/08

第33章 ポチが新幹線に乗った日(3)

 家内は、ポチを入れたゲージを駅弁のように首から吊り下げ、背中にはリュックを背負いながら、新横浜駅の新幹線の改札を抜け、ホームへ上るエスカレーターに乗った。ポチが入ったゲージは約16kgにもなり、家内にとって想像以上に重いものであった。

 ホームまで上った後、ゲージに付けたベルトを首から外し、ゆっくりと床に下ろした。この時、揺れる不安定なゲージの中で、ポチも懸命に足を突っ張り動くので、ゲージをゆっくり下ろすためには、スクワット状態で腰を落とすような姿勢になり、思いも掛けない力が要るのに家内は驚いた。スタートしたばかりなのに「こりゃぁ~この先、気合入れていかねば!」と家内は思ったらしい。
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 早朝なので乗客は比較的少なかったが、それでも「なんだ?こりゃ?」と横目でチラチラ見られる。新幹線に中型犬を持ち込もうとする人物に対し、好奇の目を向ける人達の視線を、家内は痛い程感じていた。
 「早朝の新幹線の中で、迷惑を掛けません様に!」必至で念じていた様である。

 やがて新幹線がゆっくりとホームに入ってくる。再度ゲージを持ち上げ、他の乗客が乗り込んだ後で最後に乗り込み、デッキにゲージを下ろした。ポチが初めて新幹線に乗った!・・と言うか、無理やり乗せられた日である。
 「やったぁ~!」デッキは家内とポチだけである。ポチはゲージに入ってから「クウォ~ン」とも「キャィン」とも一言も声を発していない。

 家内は、「ポチお利口だね!お利口だね!」と、ゲージの隙間から指でポチに触れながら、ポチを褒めまくった。ゲージの隙間から、水を入れた紙コップを変形させて差込み、ポチに飲まそうとしたが、この時は飲もうとしなかった。ポチも暫くしてデッキの様子に慣れたらしく、お座りの状態でリラックスしてくれたようであった。

 漸く落ち着いた家内は、リュックの中から古いカーテン生地を出してゲージに掛けてやった後、ゲージの上に腰を下ろし本を読める状態となった。そして、時折ポチに声を掛けてやるのであった。
 検札に廻ってきた車掌さんが、大人しくしているポチの様子を見て、「車内には空席が有りまよ。中でゆっくり座って下されば。」と勧めてくれた。ちょうどデッキから入ってすぐの席が空いていたので、ポチと共に移動して、リラックスした気分になった途端、ポチもその雰囲気を感じたのか、前足で遠慮気味に「ガリ、ガリ」とゲージを掻き、「出してくれ!」と訴え始めた。
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 家内が、「ポチだめよ!静かにして!」と小さな声で言ったが、「ガリガリ!ガリガリ!」と前足の動きは更に早くなってきた。静かな車内の中で家内は居た堪れなくなり、即デッキに戻ったそうである。
 デッキに戻ったポチは、名古屋駅に着いた時、周囲が乗降者でバタバタした時も静かなままで、無事京都駅迄辿り着いたのであった。家内はゲージを持ち上げ、「さぁ~ポチ行くよ!」と、新幹線を降り、山陰線ホームに向ったのであった。

 山陰線(現在はおしゃれに、嵯峨野線と呼ばれている)ホームは、当時「0番線」となっていて、京都駅正面(北口)から更に西に外れた位置にあり、八条通りに面した南口側の新幹線ホームからは、駅を横断するという相当長い距離がある。
 その上、山陰線のホームに下りるのに当時はエスカレーターが無かった(今はある)。

 体の前にあるゲージのため前が見えない状態の家内は、階段を転げ落ちないよう片手で手摺を持ちながら、首に掛けたベルトともう一方の片手でゲージを支え、反り返った状態で一歩一歩下り切って、漸く山陰線のホームに着いたのであった。

 この後何度か、ポチと共に新幹線通いが続いたが、後々家内は、この新幹線から山陰線までの距離が、肉体的に一番辛かったと言っていた。そして、この後、小1時間程の山陰線の旅が始まった。
                                       つづく

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