« ポチの休憩室 | トップページ | 第36章 ポチのお見舞い訪問(2) »

2005/08/20

第35章 ポチのお見舞い訪問(1)

 新幹線と在来線を乗り継ぎ、京都府の片田舎までやってきたポチは、道中不安だらけであったであろうが、顔見知りである義姉の迎えの車の中では、後部座席の上で安心しきって瀑睡していた。

 車が家内の実家の2~3キロ手前まで来ると、ムクッと立ち上がり、尻尾が上った。義姉が後ろを振り向き、「ポチッ、家に着くのが分かるの?」と不思議がっていたそうだ。
 
 余談であるが、私達が、盆と正月に、ポチを連れて車で帰省するときにも、同じ行動をしていた。また帰省先からの復路では、東名高速の厚木I.C.手前辺りで、ポチは窓の隙間から鼻先を外に出し、鼻をクンクンさせながら、我家が近い事を感じて、尻尾を上げ、窓の外の景色を懸命に見るのであった。
 家内と「どうして分かるのかな?景色じゃ無く、やはり風の薫りだろうな」と、いつも話していたものであった。

 さて、無事に家内の実家に着いたポチであったが、実家には、先住のオス犬がいた。義姉が5年前に、一人暮らしの義父の話相手にと、買い求めてきた、柴犬の「次郎」である。
 RIMG0137

 昔堅気の義父に、幼い頃から厳しく躾けられた次郎は、大変気の強い犬に成長していた。子犬の時の次郎は、年上のポチにじゃれ付いていたが、成長してからは、自分のテリトリーにポチが近づくのを嫌がり、唸り声を発したのであった。
 ポチとしても、「なにっ!チビのくせにっ!」と言う気持ちがあるのか、お互い仲良しにはならなかった。

 義父の症状はといえば、環境を変えない為に入院せず、義姉夫婦が一ヶ月以上点滴に付き添いで通院してくれたお陰で、呆ける事無く、気丈に立ち直ってくれていた。
 ただ、脳梗塞で視神経にダメージを受けているため、見るもの全てが何重にも見えて、忍者の如くグルグル回るのは治らなかった。

 義父は、家の中を杖を頼りに、「このドアは本物!これは偽者!」と言いながら、歩く練習をしていた。
 食事の時も、リハビリのつもりで、義父の食べ物は小皿に入れ、何重にも見える小皿から、本物を自ら見つけ、食べてもらうようにしていた。テーブルの上に置いてある箸を、手に取るときから、何度も空を掴みながら、漸く本物の箸を掴める状態であった。
 「父のため、見て見ぬ振り!」心を鬼にした、厳しい娘の特訓がつづくのであった。
                                   つづく                  

|

« ポチの休憩室 | トップページ | 第36章 ポチのお見舞い訪問(2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/81356/5549017

この記事へのトラックバック一覧です: 第35章 ポチのお見舞い訪問(1):

« ポチの休憩室 | トップページ | 第36章 ポチのお見舞い訪問(2) »